シャジクモ類に似た水草

シャジクモ類 (図1) は、円柱形の細長い細胞 (節間細胞) が長く連なった1本の主軸があり、各節部から放射状に輪生する輪生枝があって (図2、3) 、さらにこの輪生枝の節には種子植物と同じように苞と呼ばれる突起がある。 シャジクモ類では水草の葉に相当する器官はないが、輪生枝は水草の葉のように見え、また、その基部に種子植物の托葉を思わせる托葉冠を持つ属がある。 このような外見は、細長い葉が輪生する水草や、細長く切れ込んだ葉を持つ水草とよく似ている。
  雄器や雌器のついたシャジクモ類と花や果実のついた水草は見誤る恐れは少ないが、これらの生殖器官がないものでは、シャジクモ類と水草を見間違える可能性があり、ルーペや実体顕微鏡などによる観察が必要とされることもある。
  シャジクモ類と水草の形態的なおもな相違点は、シャジクモ類では主軸も、輪生枝も円柱形をしている (図2、3) 。 一方の水草の葉は、ほとんどが扁平であり、裂片であっても、その中央部には少なくとも1本の葉脈がある。 また、シャジクモ類の主軸は太くてもせいぜい 1.5 mm まで、多くは 0.5 mm 前後であり、輪生枝はさらに細い。
  以下に、シャジクモ類に似た水草の葉の形態的特徴を比較して整理しました。 シャジクモ類の調査の参考にしてください。         (大森)

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左から ; スギナモ、コタヌキモ、バイカモ

○葉は輪生。
・葉は細裂しない。
  線形で全縁    ・・・スギナモ科スギナモ(図4)
  糸状で裂片の先は2裂する (図5)。幅が広い水上葉がある
           ・・・ミソハギ科ミズスギナ
・葉は細裂する。
  葉身は羽状に細裂する (図7)
          ・・・アリノトウグサ科タチモなど(図6)
  葉は二又に分かれる。
   線形で、1、2回二又分枝する。裂片には鋸歯がある(図8)
              ・・・マツモ科マツモ
   細裂して糸状になる。 幅の広い水上葉がある
           ・・・ゴマノハグサ科キクモなど(図9)

◎葉は対生または輪生状 (側枝の基部にも葉が出るので) 。
・鋸歯はなく、1脈がある。基部は葉鞘になる
           ・・・イトクズモ科イトクズモ (図10)
・葉の縁には鋸歯がある (図12)。基部は葉鞘になる (図13)
           ・・・イバラモ科イバラモなど (図11)

●葉は対生。
・5裂してさらに2、3回二又に分裂し、全体は扇状
     ・・・スイレン科ハゴロモモ (フサジュンサイ) (図14,15)

△葉は互生。
・葉は線形で細裂しない。
  縁は鋸歯がなく平滑。 基部は葉鞘になる
           ・・・ヒルムシロ科イトモなど (図16 )
  縁は鋸歯がある (図18) 。 基部は葉鞘となって茎を抱く
           ・・・カワツルモ科カワツルモ (図17)
・葉は細裂する。
  葉は細裂し (図20) 、多くは捕虫嚢をつける
           ・・・タヌキモ科タヌキモなど (図19)
  3裂してさらに細裂し、全体は扇状または筆状
           ・・・キンポウゲ科バイカモなど (図21)

図の説明 :

1. シャジクモ属の一種 ;
2. ヒメフラスコモ ;
3. ハダシシャジクモ ;
4. スギナモ ;
5. ミズスギナの2裂する葉の先端部 ;
6. タチモ (左:雄株、右:雌株) ;
7. オグラノフサモの葉 ;
8. マツモの葉 ;
9. コキクモ ;
10. イトクズモ ;
11. イトトリゲモ ;
12. 葉の先端部 ;
13. 葉鞘 ;
14. ハゴロモモ (フサジュンサイ) ;
15. 葉の先端部 ;
16. リュウノヒゲモ ;
17. カワツルモ ;
18. 葉の先端部 ;
19. コタヌキモ ;
20. 葉 ;
21. ヒメバイカモ

<図は三木茂 (1937) 、Morioka (1941) ほかによる>

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