車軸藻の見分け方

シャジクモ属 (Chara)

シャジクモ属の仲間は世界中に分布し、日本では約15種類が確認されており、全国各地の湖沼や水田などに生育している。 属名である "シャジクモ(車軸藻)" は、藻体を上から見たときの様子が"車軸"に見えることから名付けられた (図1a)。
 輪生枝は数個の細胞が連なって直線状になっており、節部に雌雄の生殖器官である "生卵器" および "造精器" (図1b)が形成され、またトゲ状の細胞である "苞(ほう)" (図1b)が伸びる。 主軸部分や輪生枝には、通常 "皮層(ひそう)" (図1c)を構成する細胞の列が、軸となる巨大な細胞(節間細胞)を取り囲んでいるが、皮層を全く欠く種も存在する。 輪生枝の基部には、苞のような細胞が冠状に並んだ "托葉冠(たくようかん)" (図1d) がある。 シャジクモ属に含まれる様々な種は、主に皮層、苞、托葉冠などの特徴にもとづいて分類されている。  日本では以下の3種がよく見られる。

シャジクモ (Chara braunii ) (図1a、2a)
最も普通に見られる種類であり、湖から水田まで様々な環境に生育する。皮層を完全に欠く種類であり、他のシャジクモ属の仲間と比べて藻体は透明感がある。

イトシャジクモ (Chara fibrosa ) (図2b)
主にため池でよく見られる種類であり、苞や托葉冠が長く伸びるのが特徴である。主軸のみが皮層に覆われ、輪生枝に皮層を欠く。他のシャジクモ属の仲間と比べて、主軸や輪生枝が細いため、藻体は繊細な印象を受ける。

カタシャジクモ (Chara globularis ) (図2c)
主に湖沼に生育する種類であり、主軸、輪生枝ともに皮層で覆われている。他のシャジクモ属の仲間と比べて、藻体はその名のとおり硬く、また独特の臭いがする。              (加藤・坂山)


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<左図>

図1.シャジクモ属の重要な形質

a. 全体像 (シャジクモ)
        (スケールバーは1 mm)
b. 生卵器(上)、造精器(下)および生卵器をとりまく苞  (カタシャジクモ)
c. 主軸を覆う皮層 (カタシャジクモ)
d. 輪生枝の基部にある托葉冠 (ヒメカタシャジクモ)
        (b-dのスケールバーは500 µm)

<下図>

図2.代表的なシャジクモ属

a. シャジクモ(スケールバーは5 mm)
b. イトシャジクモ(スケールバーは5 mm)
c. カタシャジクモ(スケールバーは1 mm)

chara

シラタマモ属 (Lamprothamnium )

シラタマモ属の仲間は日本には1種 ( シラタマモ、Lamprothamnium succinctum ) (図3a) のみが知られている。 シラタマモは汽水に生育し、外部形態はシャジクモ (Chara braunii )によく似ているが、地中の仮根部に白色の "球状体" (図3b) と呼ばれる栄養生殖器官を形成するので容易に区別できる。この白玉のような球状体をもつことから和名がつけられた。
   シラタマモは日本では最初に加崎英男博士によって秋田県の八郎潟で発見された。その後、徳島県出羽島にも生息していることがわかった。しかし、八郎潟が干拓により消滅したために、出羽島が日本唯一のシラタマモの自生地となった。現在、出羽島のシラタマモは国の天然記念物として保護されている。     (坂山・加藤)

lamprothamnium
図3. シラタマモ
 
a. 藻体の先端部分;
b. 球状体 

(スケールバーはすべて1 mm)

ホシツリモ属 (Nitellopsis)

ホシツリモ属の仲間は主にヨーロッパからアジアにかけて分布し、3種が含まれるが、よく知られているものはホシツリモ Nitellopsis obtusa の1種のみである(図4a)。 日本においてもホシツリモは確認されており、比較的大型の湖沼の水深の深い場所に生育する。
   属名である "ホシツリモ (星吊藻)" は、"星状体" と呼ばれる星形のムカゴ (無性生殖器官 ; 図4b) が、藻体から吊り下がるように形成されることから名付けられた。
   本属はシャジクモ目の中で最も大きく生長し、ときに数メートルにもおよぶ。 輪生枝の節部からは巨大な苞が伸び、一見フラスコモ属のように叉状分枝しているように見える (図4a)。 また、藻体主軸の各節部は顕著に肥大する (図4c)。
   雌株と雄株が存在し (図d)、雌雄の生殖器官が同一個体に形成されることはないが、自然界において生殖器官が形成されることは非常にまれで、繁殖はほとんどが星状体による無性生殖によるものと考えられている。   (加藤)

Nitellopsis
図4.ホシツリモの形態

a. ホシツリモの全体像 
b. ホシツリモの名前の由来となった星状体
   (スケールバーは1 mm)
c. 肥大した節部を下から見た様子
   (スケールバーは3 mm)
d. 雌株に形成された生卵器
   (スケールバーは1 mm)

フラスコモ属(Nitella

フラスコモ属の仲間は日本には約50種類生息するといわれている。しかし他にも分類学的な判断が難しいものが数多く知られており、正確な数は明らかではない。
 フラスコモの属名は生卵器の形がフラスコに似ていることに由来する (1ページの図b)。
 フラスコモ属は輪生枝の終端部分(最終枝と呼ぶ)の特徴に基づいて大きく3つに分けることができる。 さらに輪生枝の他の形質や卵胞子の特徴、特に壁の表面・断面構造 (1ページの図e-g) にもとづいて種が分類されている。

1. フラスコモ(Nitella)亜属
輪生枝の分枝回数が少なく (1〜2回)、一般的に大型のもの。 顕微鏡で最終枝を見ると1細胞でできている (図5a)。 大きな湖沼に生育するものはヒメフラスコモ (N. flexilis 、図6a)である場合が多い。 一方、水田で見られるこのタイプのものはたいていトガリフラスコモ類 (N. acuminata など)である。

2. ヒエラ(Hyella)亜属
輪生枝は普通2〜3回分枝する。 最終枝が1〜3個のソーセージ状の細胞で構成されている (図5b)。 日本にはハデフラスコモ (N. pulchella、図6b) 1種のみが生息する。 ハデフラスコモは藻体全体が厚い寒天質で覆われており、枝の分枝している部分が基部の細胞(第一分射枝と呼ぶ)に対して極端に短いので野外で見分けやすい。

3. ティファレニア(Tieffallenia)亜属
輪生枝の分枝回数が多く (1〜5回)、輪生枝が集まった部分が扇のように見えるものが多い。 大型のものから小型のものまで大きさは多様である。 顕微鏡で最終枝を見ると1〜3細胞でできており、終端の細胞が極端に小さくトゲのような形をしている (図5c)。 湖沼にはオトメフラスコモ (N. hyalina 、図6c)やキヌフラスコモ (N. gracilens )など、水田にはフタマタフラスコモ (N. furcata 、図6d)やミルフラスコモ (N. axilliformis )などが生育する。(坂山)

Nitella 図5. フラスコモ属の最終枝

a. フラスコモ亜属
b. ヒエラ亜属
c. ティファレニア亜属
  (スケールバーは全て0.5 mm)

chara5Nitella4 図6. 代表的なフラスコモ属

a. ヒメフラスコモ
b. ハデフラスコモ
c. オトメフラスコモ
d. フタマタフラスコモ
  (スケールバーはすべて1 mm)